ALFA ROMEO JUNIOR ZAGATO 1600

                                                                  撮影  じゅにあ氏

ROSSO氏は 悩んでいた。

そう、すでにアルファロメオを2台乗り継いだ彼は、もはやまごうこと無きアルフィスタ。次のステップへの岐路に差し掛かり、真剣に迷っていたのだ。

アルフィスタなら誰もが憧れるスペチアーレな世界へアシを踏み入れて、常人と袂を分かつか。しかしそこは、阿片窟を思わせるような、重病の毒蛇中毒患者の巣窟である。

それとも毒蛇中毒からきっぱりとアシを洗い、トヨタのワンボックスを購入して上質な樹脂とゴムに囲まれて幸せに過ごすか?

賢明で誠実な私が、後者を勧めた事は言うまでもない。

しかし、全ては遅かったようだ。

すでに蛇の猛毒は、ROSSO氏の脳に深いダメージを与えていたらしい。

「えるこ〜るすぱ〜だ、じゃんにざが〜と」じゅにあ氏は訳の分からないうわごとを発しながら、クルマを物色し始めた。

次に私が彼に会った時、ROSSO氏はすでにROSSO氏ではなくなっていた。

私がその名前で彼を呼ぶと、彼は小指を立てながら、「チッチッチッ。ROSSOは昔の名前だ。今日からじゅにあと呼んでくれたまえ」と傍らのクルマを目をやった。

そこには、生産台数わずか数千台、カロッツエリア・ザガートの傑作、アルファ・ロメオ・ジュニア・ザガート1600が鎮座していた。